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11. 春風に散る

 4-IMG_9239.jpg          
久しぶりによく晴れた春の日曜日。こんな日は公園の池がザリガニ採りの子供たちで賑やかになる。その様子を撮ろうと公園へ出かけてみると子供たちの姿はなく、代わりに虫大好きニンゲンのムシ先生がいて、ワタシを見るや興奮気味に「ナナフシモドキの幼虫がいるんです。こっちです」と歩き出す。日ごろは大変礼儀正しいジェントルマンなのだがムシのこととなると態度豹変。枯葉枯木を踏みしだいて、ムシの苦手なワタシを茂みの奥へと引きずり込む。桜の老木の根もとで止まると、「ほら、可愛いでしょう」と目じりを下げるが、ワタシにはムシ喰いだらけの桜の新葉しか見えない。何度か指差してもらって、やっと糸のように細い動く物体が見えた。  
       
ナナフシ(七節)は節足動物門昆虫綱ナナフシ目に属する昆虫の総称で、節が七つあるのではなく、節がたくさんあるから七節だそうで、「これはそのうちのナナフシモドキです」とご説明いただくと頭がこんぐらがる。 ナナフシには興味はないが、木の暗褐色か葉っぱの黄緑色にカモフラージュをしている糸のような幼虫は、撮影の練習にちょうどいい。

ところがレンズを覗いてみると、こりゃあ、むつかしいわ。葉の裏へ隠れたり、下の葉へ落ちたり忙しく動く。木の幹を上りはじめたのにピントを合わせていると、腰というか身体全体をフリフリと振り始めた。「威嚇しているんです」とムシ先生は目を細めるが、こんな糸みたいな身体で威嚇して効果はあるだろうか。

4-IMG_8739 ハラビロカマキリ(腹広) 

ワタシがカメラに貼りつくとムシ先生は姿を消す。どこかでまたムシを探しているんでしょう。落葉の上にどっかと座りこんでナナフシに集中する。

と、忙しげな話声が聞こえてきた。見覚えのあるお顔の男性が若い女性と現れてせかせか辺りを見渡しているのが見える。曲がったヒゲの先がぴ~ん、髪が飛んだり跳ねたり。アラーキーだ?!子供たちがザリガニを採る池のそばに、小さなぬいぐるみをもった女性を立たせると、「お~し、いいぞ、いいぞ」という元気な声を上げてシャッターを切り始めた。

近くで天才アラーキー先生の撮影を学ばせていただこうかと思ったが、しきりに声をかけながらフィルムカメラでバシャバショ撮っておられるご様子は、一匹のムシにてこずっているワタシのレベルではないと悟って、ナナフシに戻る。ずいぶん粘って、4GBメモリーいっぱいくらい撮った。次々再生してはうっとり。「名作秀作、撮りました!」とムシ先生にも報告して幸せいっぱいで家路を急いだ。

ところが、家のコンピューターに現れるナナフシはカメラモニターに写ったあの名作秀作とはまるで別物。何度も読んだマクロレンズの使い方の本を確認してみて失敗の原因がわかった。ピントが極端に浅い中望遠マクロレンズを使って、保護色に身を包んだ糸のようなムシを絞り開放で撮るという大きな間違いを犯していたのだ。ボケをおもしろがってばかりいないで、謙虚に他の絞り値も試してみるべきだった。幸福の絶頂から一瞬にして奈落の底へ突き落とされた、こういう夜はヤケ酒を飲む気にもならず、重い心と疲れた体をひきずって寝るしかない。

4-IMG_8893.jpg  
疎水にタンポポのふわふわ毛玉が2つ、仲良く並んでいた。ナナフシを撮影して帰るときには二本とも茎だけになっていた。美しい毛玉は春風に飛ばされて、消えてしまったのでしょう。でも失せたのではありません。どこか遠くに着地して、そこで芽を出し、また花を咲かせるのでしょう。それに較べて、ワタシの花は咲くことがあるのでしょうか。 あ~、もう寝たほうが良さそうだ。






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