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9. 写真、再開!

 
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ブログにもカメラにも長いご無沙汰だった。昨年暮から私事に追われて心身ともに疲労困憊。写真を撮る気分にないというのに、キャノンからレンズ一ヵ月間お試しOKの広角ズームの24-70mmF2.8レンズが送られてきた。これまでも二度応募したが外れてばかり。こんな時になぜ当るのかと、うれしいよりもうらめしい。一ヵ月以内にレンズを使用した感想に作品一枚を添えて返却せよとは酷なお言葉。それまでには元気になるさ、と思っているうちに気がつけば締切間近。あ~何かを撮らねば。

ちょっと近所を散歩してくるか。カメラをぶら下げて出てみたものの、普段だとおや?あれ?と撮りたいモノやヒトが道の端々に目につくのだが、今は日常のなかに被写体を見つける心の余裕がないようで、道はただの道でしかない。 


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そうだ、暮の浅草へ行ってみよう。あそこならなにか撮れるだろう。 ところが、仲見世の賑わいを見ても、店頭に並ぶ季節感あふれる正月のお飾りをみても、ちぃ~とも、心がときめかない。ご本堂で「神様仏様、お願いです。写真を撮らせてください」と手を合わせてから、階段を下りていたときだ、下の階段で幼い子供がよろめいた。お母さんは乳母車に目をやっていて気がつかない。「あぁっ!」と声を出して下りかけたとき、子供の近くで手すりを伝ってよろよろと降りていたおばあさんがさっと子供を抱きかかえた。お母さんが何度もお辞儀をしてお礼を言うのを、「いいのよ、気をつけなさい」、それだけいうと傘を杖代わりにしておばあさんは足をひきずりながら、ひょこひょこ去った。 どうも気になるばあさんだ。

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境内をぐるっとまわったが出来の悪い記念写真のようなものしか撮れない。浅草寺の周りもぐるぐる、うろうろ。 と、頭がてらてら輝くお地蔵さんが目についた。浅草不動尊と書かれたお地蔵さんをひとびとが撫でていく。特に頭と足は撫でるひとが多いようでぴかぴか輝いている。カメラを構えてレンズを覗く。ピントを合わせていると集中力が目覚めてきた。お参りするひとに声をかける余裕も出てきた。お地蔵さんの背景がごちゃごちゃしているので絞りを絞って、お地蔵さんを撫でるところをアップで撮ろうと試みるのだが、生憎、お試しレンズは超広角。結構粘ったが構図に限りあり。まぁ、こんなところかと帰りかけたとき、あのおばあさんだ!

石段で子供を救ってあげた、あのばあさんが傘をつきながらやってくるではないか。声をかけると、浅草生まれの浅草育ちで、「こんなに長生きするつもりなかったのに来月、90歳になるのよ」とカラカラ笑いながら、子供の頃に遊んだ場所や空襲にあったときの浅草の様子を話してくれた。ワタシはシャッターを切り続けた。

「ありがとう、元気でね」と別れかけると、「写真、どうしようか?」と尋ねられた。欲しいの?もちろんよというわけで、住所を書いてもらおうと紙を出してペンをゴソゴソ探していたら、おばあちゃん、さっとバッグから筆入れを取り出した。ジッパーを開けると何本ものボールペンや鉛筆が入っていた。その一本を取り出すや、ささっと住所氏名を書いてくれた。小学校もろくにやってもらえなかったというのに、達筆だった。てっきり短歌かなにかをやっているんだと思って尋ねるとまたも思いがけないお答え。「民生委員を長くやってたから。その癖でいつもペンを持ち歩いている」と。

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        「90のばあさんが、こんな立派なカメラで撮ってもらうなんて…はずかしっ」。

別れ際に、「これ持ってきな。うまいよ」とお土産に買ったというせんべい袋をくれようとする。「いいよ、お土産にもって帰ってあげたら」と断ると一喝!「写真を撮ってもらって、手ぶらであんたを帰せないよ」。さすがは浅草生まれ。その迫力に、「ありがとう」とお礼を言っていただきました。

どれもこれも、立派なレンズに申し訳ないような写真の出来だけど、ばあちゃんと撫で地蔵さんの写真を一枚つけて締切り日までにレンズを返却した。 写真は目にした被写体を写し撮るのではなく撮影者の心象風景をも写すものであることがよっくわかった。ここはあせらず、心身の疲労がとれるのを待つことにした。啓蟄を過ぎて、やっと写真を撮りたいという気持ちが蠢き出したようです。 あと、もうちょっと。

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